映画「Shall we ダンス?」 「汝の耳を魅する」前に監督自身がとことん魅せられている。

日本映画

 映画というものは、「物語」「絵」「音」を併せ持つ総合芸術といわれます。「小説」と「絵画」と「音楽」を同時に表現したものが映画。

 周防正行監督は、この三つの融合をを強く意識している監督のようです。それが大成功したのがこの「Shall we ダンス?」です。

 三つの中で軸になるのは「物語」です。

 映画の冒頭で監督はシェイクスピアの言葉を借り、次のように宣言します。

 「BID ME DISCOURSE. I WILL ENCHANT THINE EAR. 物語せよと言へ。 我、汝の耳を魅する話をせむ」

 この映画は原作も周防監督です。おそらく、物語の骨格が出来上がっていったときいちばん感動したのは監督自身ではないか。撮って絵にしたものをはやく見てみたいと仕方なかったのではと思います。とにかく終始面白がって楽しんで作っているのがバンバン感じる。観る側もそれに乗せられ楽しめる。

 お話ししている人がそのお話しにひたすら感動していて聞いてほしくてたまらずなんとか伝えたいといった風。「汝の耳を魅する」前に監督自身がとことん魅せられている。それが俳優・スタッフたちに奥深く伝わり、全員が感動して作っている。大集団で作る映画というものの完成度を高めています。

 演劇や生演奏などは演じる側と観る側のリアルタイムの相互刺激で起こる一体感が魅力です。映画は原理的にそれはありえないはずが、「Shall we ダンス?」は、観ている側が、監督や俳優、スタッフに至るまで、その熱い息吹を「リアル」に感じる。観る者に感づいたかのように、観るたびに違う「熱さ」を見せてくれます。

 人を感動させるのは人の心をもってのみ。

 それがモノであっても、むこうに人がみえるからこそ感動するのでしょう。

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